【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



勿論、そんなことをしても無駄なんだということは、わかっていた。


そんなとき、現れたのが沙耶だ。


「初対面で、殴られて。母さんのことで暴力は苦手だったはずなのに、沙耶に殴られたときだけ、ああ、自分が悪かったと目が覚めたような気分になった。まぁ、暫く、イラついていたがな。そのあと、沙耶という人間を知れば、知るほどに惹かれて……今だ」



「……そんな風に、まっすぐに俺も和子を心から愛せたら良かったんだがな……」


そうすれば、母さんは父さんを愛していたかもしれない。


面影を重ねるのではなく、春馬という人間を。


だが、今となっては、かもしれないで終わってしまう。


結局、父さんがどんなことをしても、揺るがずに壊れていった母さんの運命はこういうもので。


母さんは、こうなる宿命だった。

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