【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


8月7日。


肩が凝るような、暇っぷりに相手は誰でも良いと思って、玄関を出ると。


「お久しぶりです、沙耶さま」


ニッコリと笑った、甲斐さんが。


(……すげぇ)


キチッと、こんな炎天下の下でスーツを着る彼。


おまけに、汗一つかいてない。


思わず、素直な感想が出てしまった。


「お、お久しぶりです……って、何用でしょうか?」


「相馬さまから、お連れするようにと命ぜられました。少し、ついてきてくださいますか?」


「はあ…………少々、お待ちください」


とりあえず、準備だけはしようと適当なもの……財布や携帯などをバックに詰め込み、家の鍵を閉める。


「申し訳ありません、急に……」


「いえ、暇でしたから」


なんだろう。


自分で来ずに、部下を使う辺りが金持ちっぽい。


真似したいとは思わないが、暑い中、ご苦労様である。


「……澪とも、お付き合いいただいているようで」


そういえば、彼の兄である相模さんの嫁が澪なんだから、彼からすれば、澪は義理のお姉さんとなる。


「いい友人ですよ。……そんなことより、敬語はやめません?別に畏まらなくても……」


相模さんの場合は、誰に対しても敬語だった。

だが、甲斐さんは違う。


「そうですか?」


「うん。つか、これから相馬に逢うなら、尚更、敬語はキツい」


あいつ相手に使える自信はない。

なお、成績の件は気にしないことにした。

あいつが最強なのは気付いているんだから、気にしても無駄だ。


大体、容姿が良くたって、成績が良くたって、金持ちだったって、相馬は相馬。


何も、変わらない。


「甲斐さんは、いつから相馬に仕えてるの?」


「甲斐、でいいよ。沙耶。いつから……そうだな、10歳の頃だね。相馬が4歳で……」


「えっ、じゃあ、甲斐って、今、24?」


「うん。兄さんが27」


「へー、じゃあ、澪と相模さんって、年の差婚なんだ!」


「まぁ、澪が14の時に兄さんが里に嫁とり帰っていったから……そうだね。10歳差だ」


「あの二人、お似合いだよね」


……なんて、世間話をし、二人で盛り上がる。


一時間ちょっとでつく、京都の町はなんだか、とても小さいものに見えて。


昔から保たれている外観に、涙が出そうになった。


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