偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「なんだよ、気持ち悪いな」
「えへへ。今日のお式を思い出してたら、自然とにやけてきちゃって‥‥」
ソファに座っていた私の隣に光一さんも腰を下ろす。彼の大きな掌がポンと私の頭の上に置かれた。
「いい式だったよな。華、すごく綺麗だったし」
「ほんとに〜?」
「もちろん。嘘なんかつかないよ」
視線がぶつかって、ふたりでくすくすと笑い合う。なんだかいい雰囲気。今夜はこのまま‥‥。
なんて思ったのは、どうやら私だけだったらしい。光一さんはそんな私の思いをするりと交わすように、ソファから立ち上がった。
「じゃ、俺も疲れたから寝るわ」
「えっ?あぁ、そうだよね。さすがに疲れたよね。じゃあ、もう寝室に行こうか」
私たちは結婚を機に新居を構えることはしなかった。光一さんが元々住んでいたマンションに私がお邪魔するかたちで、新婚生活をスタートさせることにしたのだ。
都心・駅近・セキュリティー万全の2LDK。子どもができれば手狭になるのかもしれないけど、夫婦ふたりには十分な物件だ。光一さんはセンスもいいから、インテリアにも不満はない。ただ、寝室のセミダブルベッドは毎日となるとふたりで休むには狭い気がする。私はそのことを光一さんに訴えた。

「あ。次のお休みでベッドを見に行かない?できれば、もう少し大きいサイズにしたいな」
そんなに贅沢なお願いではないはずだ。もちろんいいよ、そんな言葉が返ってくると思っていたのに‥‥。
「悪いんだけど、寝室は俺の部屋にしていいかな?隣を華の部屋として使ってくれる?」
ーーん?俺の部屋?華の部屋って‥‥。なにか聞き間違えただろうか?







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