偽装新婚～イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない～

一人ぼっちの夜は寂しいので、私はいつもよりずっと早い時間にベッドにもぐりこんだ。
にもかかわらず、睡魔はなかなかおとずれてはくれない。

今日のことを思い出しながら、自分の気持ちを整理する。
デートは悪くなかった……はずだ。少なくとも私はすごく楽しかった。まずはそれだけで充分、満足すべきなのだと、自分に言い聞かせてみる。
もちろん、いま光一さんが隣にいてくれて、デートの感想を語り合ったりできていたなら……それはとても幸せなことだけど、いきなり百点満点を求めても仕方ない。
歩みはゆっくりで構わない。少しずつでも、確実に良い方向に進んでいけるのなら大丈夫。

「よし！　楽しかったことだけ思い出しながら、今日は眠ろう」

光一さんがいま、どこで、誰といるのか。それは決して考えてはいけない。
楽しいことだけ考えて、いい夢見るんだ！
そう強く心に誓って、私はぎゅっと目をつむった。

その誓いも虚しく、翌朝の目覚めは最悪だった。眠りが浅く、夜中に何度か目を覚ました。
二度目に目を覚ました時、玄関のドアがカチャリと開く音を聞いた。枕元のスマホを確認すると、深夜1時を過ぎたところだった。

光一さんが私の様子をうかがうためか、そっと部屋の扉を開けた。
私はなにも悪いことはしていないはずなのに、なぜか慌てて寝たふりをしてしまった。