偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
ふいをつかれたのか、光一さんは一瞬真顔になる。そのあと、おかしそうにクスリと笑った。
「読めねぇな。おとなしそうに見えて、時々やけに積極的だし」
「本当におとなしい子なら、耐えきれなくてとっくに離婚してると思う」
「たしかにな」

しばしの沈黙のあと、光一さんはゆっくりと私の背中に腕を回した。
きゅっと、優しく抱きすくめられる。良い匂いがふわりと鼻をかすめた。
シャンプーだろうか、コロンだろうか。ビターなのに、どこかに甘さの残るその香りはとても彼らしいなと感じた。

コツンと額をくっつけながら、光一さんは低くささやく。
「意識はしてるよ。いま俺が、女として見てるのは華だけだ」
自分の体温が急激に上昇していくのがわかった。夢を見ているような、不思議な心地のなかで、私は言葉を重ねた。
「そ、それって、この先、恋になったりとか……」
「さぁ。それはどうかな?」

私が恋する相手は、悪戯な瞳で、にやりと不敵に笑った。

「そういやさ、華の両親て普段はどんな感じなの?」
互いになんとなく、寝つけないでいた。(なんて、かっこつけてみたけれど、光一さんに抱きしめられているこの状況で眠れるはずがないっ)
それを察してか、光一さんが他愛ない話題をふってくれた。



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