シンデレラLOVERS

「だから恩返しがしたかったの」


あの時。
わたしを裏門に抱き上げて、抜け出すのを手伝ってくれたこと。


もしかしたら、善雅くんにとっては気まぐれでしただけの行動だったのかもしれない。


それでも、わたしは善雅くんにありがとうの気持ちを伝えたかった。


そして、いつかわたしに笑いかけて欲しいって密かに願っていた。


わたしの答えが意外だったのか。
しばらく呆然とした顔でわたしを見つめた後、


「……鶴の恩返しかよっ」


ははっと笑いながら言われた言葉に、今度はわたしがポカンとする番だった。


どこかで聞いたようなセリフに、思わずムッとして唇を尖らせてしまう。


なんで芹華ちゃんといい、善雅くんといい……わたしを鶴にしたがるんだろう。


二人から鶴呼ばわりされたらさすがに、自分がしてることがおかしいのかと思えてしまう。


それに、わたしが善雅くんを好きな理由は裏門で助けてくれただけじゃない。


善雅くんと出会ってから感じたいろんな感情が、平凡な毎日に彩りをくれた。


「それだけじゃないよ。……善雅くんの為にお弁当のおかずを考えたり、プレゼントを考えるのも楽しかった」



「おまえ……どんだけ俺のこと好きだったんだよ」


わたしの言葉を聞いた善雅くんが、困ったように笑って言い放ったセリフ。


それが照れ隠しなんだって思ったら、


「今の方がもっと好きだよっ」



もっともっと善雅くんが愛おしいって思えて、自然と顔が緩んでしまった。


善雅くんへの好きが溢れて、思わず腕にギュッと体を寄せた。


前は近くて遠かった善雅くんの体温が、今は誰よりも近くに感じられる。


ぐっと近付いた二人の体温に、善雅くんとの間に生まれた絆を感じていた。
< 102 / 115 >

この作品をシェア

pagetop