シンデレラLOVERS

イルミネーションを見た帰り道。


すっかり日が暮れて暗くなった道を、善雅くんに手を引かれながら歩いていた。



わたしの家があるマンションに近付いていくにつれて、わたしの手を握っていた力が強さを増していく。


それが離れたくないって気持ちの現れだったら嬉しい。


だからわたしも、そんな善雅くんに伝えたい気持ちがあった。


それを伝える為に、わたしは善雅くんの長い指から自分の指をほどいて、持っていたカバンの中を開いた。


急に手を離したわたしを怪訝そうに見つめていた善雅くんの前に、


「これ」


カバンの中から取り出したマフラーを差し出した。



「あっ……」



貰ってもらえないって思いながらも、善雅くんへの未練で編み上げたマフラー。



それを受け取った善雅くんの顔が驚いたように、はっと目を見開いた。


初めて見せた時はまだ編みかけでマフラーだって呼べないくらい短かった。


だから、倍以上の長さに編まれて完成したこれを、


「あれから……編んでくれてたのか?」


自分と別れた後も編んでいたのか尋ねられて、頷きながら小さく笑った。



完成したらわたしの前で巻いて欲しいな……。



あの時言った言葉には頷いてもらえなかったのに。


編むのを止めることも、捨てることも出来ないで……未練がましくも完成させてしまった。



「善雅くんと静葉さんが並んだ時、すごくお似合いだなって思った。だから善雅くんのことを忘れようって思ったのに忘れられなくて……」


未練がましく編んじゃったの。



そう白状しながら背伸びをして、驚いてわたしを見つめる善雅くんの首にマフラーを巻いていく。


思った通り……善雅くんにはカーキ色がよく似合う。


自画自賛だって言われちゃうかもしれないけど……。


わたしの作ったマフラーを巻いた善雅くんの姿を見てたら、素直にそう思って笑顔が零れた。



その次の瞬間。
善雅くんの腕がわたし力強く抱き締めていた。

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