シンデレラLOVERS
「……行かせちゃってよかったの?」


不意に聞こえた声で、俺は反射的にそちらを振り返った。



俺の背後に立っていたのは綺麗な顔をした気の強そうな女の子。



背が高めでスラッとしてるところが、なんとなく芳川に近い。


芳川に例えたりしたら怒られそうだけど……。




「水原さんの……」


「5組の相沢 芹華です。噂はかねがね……日菜から聞いてるよっ」



こう言って相沢さんは綺麗な顔とは裏腹に、にっと子どもみたいに笑ってみせる。



噂はかねがねって……水原さんはどんな噂を彼女に吹き込んだんだろ……。


思い当たる節がなくて考え込んでいた俺に、


「いろいろ日菜を助けてくれてありがとっ」


相沢さんが言った言葉に俺はますます不思議になって首を傾げた。



……助けたって、なんのことを言ってるのか検討がつかない。


善雅の補習で待ちぼうけ食らってた時も、声をかけただけで何もしてないし。
芳川が善雅の前に現れた時だって、勝手に連れ去って善雅の昔話をしただけ。


残念ながらどれも水原さんの助けになっているとは思えなかった。


「日菜の話を聞いてたら、城崎くんのおかげであの二人がちゃんとくっつけたみたいなもんだしね」



違う。


相沢さんの言葉を直ぐにでも否定したかった。


もし俺が水原さんにしたことが、水原さんを助けたことだとしたら、それは全部自分のエゴだ。



「俺が……善雅に水原さんを薦めたから」



俺が善雅を挑発する為に、たまたま廊下を通りがかった水原さんを指名したりしたから……。


だから水原さんは善雅に振り回されて、傷付く思いもしてしまった。


その罪滅ぼしをしたいが為のエゴだ。


「それも運命ってヤツだったんじゃない?」


自責の念にかられる俺を知ってか知らずか。


ヤケにあっさりと相沢さんは言い放って、思わず呆気にとられた。
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