シンデレラLOVERS

弾んだ調子を抑えきれなくて、わたしは勢い任せにカバンからもう一つのプレゼントを取り出した。


「あとね! 間に合わなかったんだけど、ほらっ」


そう言ってわたしが取り出したのは、編みかけのマフラー。


形に残るモノはやめとこうかと思ったけど、どうしても有宮くんの為に何かを作りたかった。


「有宮くんの好きなカーキ色にしてみました」


わたしの言葉を聞いて、有宮くんはまた怪訝そうな顔してる。


好きな色の話もいつ話したかなんて、覚えてるワケないよね。



……それでもいい。


代わりにわたしの中には、有宮くんとのやりとりがしっかりと残されてるから。


「今日には間に合わなかったけど……完成したらわたしの前で巻いて欲しいな……」


時間が流れていき、終わりに近付いていく度に残された時間を意識せずにはいられなかった。


手編みのマフラーなんて、ホントはちゃんとした彼女が贈るべきプレゼントなんだってわかってる。


わたしみたいな期間限定じゃない……本物の彼女が。


それでもわたしは、有宮くんの記憶の片隅に残りたくて必死なんだ。


残りわずかでもいい。
有宮くんにわたしを見て欲しいって……思ってしまったから。



「間に合えばな」


突き放すような素っ気ない有宮くんの声。


これがいつもの有宮くんだったね。


わたしなんて眼中に入ってない、いつもの有宮くんだ……。




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