シンデレラLOVERS

日菜琉が去ってからのことはあまりに突然で、現実味がなくてよく覚えていない。


ヨリを戻そうって……プライドの高い静葉が申し出てきたこと自体が嘘みたいで。


その答えを迫る静葉に俺は深く頷いて見せた。


答えを聞くなり俺の体に抱きついて静葉が喜んでいた。


そんなぼんやりした記憶の中で、ただ一つハッキリしているのは……その瞬間から俺は再び静葉の彼氏になったことだけだった。



一緒に帰ろうと言う静葉に断りを入れ、俺が真っ先に向かった場所。




「日菜琉っ」


俺にまだ彼女をこう呼ぶ権利があるのかはわからない。


ただとにかく、自宅のマンションに入ろうとしていた日菜琉を駆け寄って呼び止めていた。


「……善雅くん」


振り返った日菜琉は驚いていたように俺を見つめている。


言うべきことは一つだけ。


なのに……なかなか口に出せない。


「ヨリ戻すの?」


「っ!」


そんな俺の心を見透かしたかのように、日菜琉は自らその話題を切り出してきた。


これを日菜琉自身に言わせる自分が不甲斐ない……。
ますます何も言えなくなって、俺はそのまま視線を足元に落とすばかりだった。



「城崎くんが教えてくれたよ。静葉さんの為に善雅くんが頑張ってたこととか、別れた後のことか……」


……俺がとっかえひっかえ色んな人と関係持ってたことも、日菜琉を一ヶ月限定の彼女にした理由も聞いたんだな。



俺のこと、軽蔑してるだろう。


今更わかりきった当たり前のことなのに、さっきからずっと俺の胸ははちきれそうに痛みを訴えてくる。

< 58 / 115 >

この作品をシェア

pagetop