シンデレラLOVERS

「あっ……ははは。こんなこと言ったら困っちゃうよね」


驚きを露わにして固まってる善雅くんに、笑って誤魔化すしかわたしには思いつかなかった……。



気持ちを伝えるつもりなんてなかったのに、これで最後だって思ったら衝動的に想いを告げてしまっていた。


一緒にいたいなんて……わたしが言っちゃいけないってずっとガマンしてたのに。
意外と弱くて欲張りな自分が恥ずかしくなってしまう。


さっきから呆然と善雅くんはわたしの瞳を見つめている。



どうかそんな顔しないで。
これ以上なんて望んだりしないから……絶対に。


「ホント……ごめんね?」


最後に善雅くんを困らせてしまったのが申し訳なくて小さく謝った瞬間、堪えきれずわたしの瞳からは涙が零れ落ちてしまった。



何があっても、善雅くんの前ではずっと笑っていようって決めてたのに……。


泣いたりしたらますます嫌われちゃうってわかってたから、ずっと泣かないように戒めていた。



「日菜琉……」


涙を隠すように俯いていたわたしを、善雅くんの不安そうな声が呼ぶ。
反射的にわたしに向かって伸ばされた手を、ギュッと体を縮めて拒んだ。


ずっとわたしのことなんか知らん顔だったのに、こんなときに優しくするなんて……善雅くんは狡い。


こんな風に心配そうな表情をされたら……アナタのことが諦められなくなる。


「……元に戻るだけだよ。有宮くん」


瞳の淵に残っていた涙を指で払い、どうにか善雅くんに笑いかけた。


そのまま身を翻してエレベーターに駆け込んだ瞬間。
堪えていた涙はどしゃ降りでわたしの頬を濡らしていった。



わたしにあんなこと言われて、すごく困っただろうな……。


でも、告げた言葉に偽りなんて一つもない。


一ヶ月前。
助けてくれた恩返しがしたくて、わたしは善雅くんの一ヶ月限定の彼女になった。



平凡だったわたしの毎日に彩りをくれた。


例え一ヶ月だけでも、傍にいられるのが嬉しかった。



善雅くん。
わたしはアナタが大好きです……。


善雅くんを想って痛む胸の痛みは、しばらく消えそうになかった。


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