シンデレラLOVERS
苦々しい顔でわたしを見ていた善雅くんが、ゆっくりと口を開いた。
「なぁ……俺のこと、殴って」
「えっ?! 無理だよ!」
「いいからっ」
わたしに申し訳ないって気持ちを少しは感じてくれてるのが伝わってくる。
でも、殴って欲しいなんて言わないで欲しい……。
善雅くんとの一ヶ月が始まった時からずっと思ってたのは……最後は笑ってさよならしたいってことだけ。
背の低いわたしに目線を合わせて屈んだ善雅くんがギュッとまぶたを閉じた。
今まで人を殴ったことなんてもちろんない。
屈んだ善雅くんを目の前にして動揺してオロオロしてしまうばかり。
でも、善雅くんが覚悟を決めたんならわたしも、
「じゃあ……いくよ?」
覚悟を決めて、目の前の善雅くんに呼びかける。
それに答えるように、善雅くんがぐっと歯を食いしばったのがわかる。
わたしが伝えたいのはただ一つだけ……。
「っ!?」
いつもよりずっと近くなった善雅くんの首元に腕を回して、そっと自分の唇を重ねた。
その途端、ずっと抑えていた感情が溢れ出す。
そして、
「好きだよ……」
それはたった一言。
この言葉に集約されて、口からこぼれ落ちていった。
「もう少しだけ……一緒にいたかったな……」
ぐっと近づいてた善雅くんの顔が見たこともないくらい驚いていて、わたしは我に返った。