飴のち林檎
保健室の前まで来て、やっぱり帰ろうかな、そう思った時。

「どうしたの、ほら、入りなさい。」

ドライな口調で後ろから声をかけられた。

あ、たしかこの人が保健室の....。

身体測定の日の記憶を手繰り寄せ、なんとか一致させた。

先生に言われるがまま、保健室の中へと入る。

「名前と症状書いて。あと、熱も測って。」

そう言われ、脇に体温計を挟みつつ、机の上のボードに向かう。

しばらくの沈黙、こ、こわい....。

先生を見ると、白衣に眼鏡、よく見ると整った顔。

ピピッ。

少しびっくりしながら体温計を見ると、エラー。

「何度?」

急に聞かれて、悪いことをしたわけでもないのに、とっさに隠してしまった。

不思議そうな先生。

ひょいっと体温計を取られ、納得した顔をすると、

私の額に先生の大きな手のひらがそっと触れる。


ドキッ


固まっていると、知らない間に額から手は離れていた。

「熱はないね。1時間だけ休んでくといい。」

そう言って、シャッとベッドのカーテンを開けた。
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