好きの海に溺れそう
「だってさ、恋って諦めようと思って諦められるわけじゃないでしょ?みんな言うけど、あたしもそう思うよ」

「…」

「まあ、その子の彼氏的にはたまったもんじゃないと思うけど」




杏光はそう言ってふっと笑った。




友達であり姉みたいな杏光。でも、本当は友達よりも姉よりもずっと近くて、形容しがたいけど…本当に大事な存在で。




そんな存在が俺にいることが、ただありがたかった。




次の日、少し復活した俺。




いつものように杏光と登校する。




でも、学校を目の前に、少しひるむ…。




田中さんにどんな顔して会えばいいのかな…。




杏光はそんな俺を察したように、背中をポンと叩いた。




「なーんもなかったフリしちゃえばいいの。意識させちゃいな」




意識させるなんてそんなおおそれたこと、果たしてできるのかは謎だけど、励まされた。




「うん…。頑張る」

「頑張れ!」



杏光にお礼を言って、下駄箱の前で杏光と別れ、教室へ向かった。




いつもみたいに騒がしい教室。




自分の席に向かう前に、先に自分の席に座ってた田中さんと目が合った。




気まずそうにちょっと目をそらす田中さん。




頑張れ、俺…。




「おはよう」




声をかけると、少しほっとしたように田中さんが「おはよう」と返してくれた。




よかった…。




一安心して自分の席に着く。




「海琉、はよ」




隣の席の水江新太(ミズエ アラタ)があとから来る。




「おはよ-」

「またお前、あの美人の先輩と登校してただろ」

「またっていうか毎日だけど…」

「まじ?彼女俺も欲しいんだけど」




出た…。




高校に入学してから、ちょいちょい杏光が彼女だと言われる。




中学のときも言われてたけど、あれはみんな分かった上でからかい半分で言ってた。




今は本気でそう思われてるらしい。



二人で歩いてるのをクラスの人に見られるとだいたい勘違いされる。
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