好きの海に溺れそう
そこには、歩が走っていた。



「日夏」



あたしは優しく声をかけた。



「あんたの勝ち」



歩はすぐにこっちまで走ってきた。



息が切れてて喋るのもままならない感じ。



「バイト…中…だ…っつの…」



歩は息を切らしながらそう言って日夏を抱きしめた。



というよりしがみついたに近いかな。



日夏の顔は赤いし半分泣いてる。



「バイトなのに何で来たの…」

「杏光がわけわかんないこと言うし…。休憩早めてもらった…」



本気の目の歩。



ほとんど泣いてる日夏。



「…好き」



ふいに日夏の口からそんな言葉が聞こえた。



歩は驚いて日夏の顔を見た。



日夏…頑張ったね?



あたしはもう退出しよう。



ちょっと良い気分になって、あたしは海琉のバイト先に向かった。



海琉に会いたい。



日夏っていう、季節外れのひまわりが咲いた気がした。
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