好きの海に溺れそう
「へへっ」

「ちょっと…なに…」



杏光は笑ってるけど、俺は恥ずかしくてちょっと怒る。



怒ったのに、杏光は「かわいいね」とまた笑った。



バカ!



そのあとも杏光がべたべたと俺にくっついてる間、ガトーショコラを完成させた。



「後半ほとんどあたしやってないよね…」



オーブンから出してテーブルに並べたら、杏光がちょっとしゅんとした。



「バレンタインなのに…ごめん…」



杏光が悲しそうにソファに正座して俺に謝る。



そんな謝ることないのに…。



「杏光」

「はい…」

「あーんして?」



杏光にそう言って、完成したガトーショコラをフォークで刺して杏光にあげた。



「おいしい?」

「おいしい…」



杏光が俺の肩にもたれかかった。



「好き…」

「ん。俺も」



そう言って2人でキスした。



甘いキス…。



それは深いものに変わった。



「部屋…行こ?」



杏光が言った。



2人とも身体を離した。



何も言わないまま、杏光が念のため、と家の鍵をかける。



手をつないで杏光の部屋に入った。



「キスして…?」



杏光が言って、右手を繋いだまま、俺は左手を杏光の頭に添えて深いキス。



杏光もそれに応えてくれる。



キスしながら、杏光が俺のシャツのボタンに手をかけた。



「待って…これ以上は…。ないからダメ…」



杏光の手を止めようとして手を上から押さえた。



さすがに今持ってないよ、ゴム…。
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