好きの海に溺れそう
というわけで、俺たちは二人でチョコを作ることにした。



迎えたバレンタイン当日。



杏光の両親は2人で今日限定の展示があるからと、都内の美術館に行ったので家にいない。



そして、玖麗がなんと、勇気を振り絞って悠麗をデートに誘った。



だから今、杏光と2人きり。



完全な2人きりって久しぶりかも…。



「何かちょっと照れちゃうね」



杏光に言われて、俺も照れながら笑った。



それを隠すように、俺はキッチンに行って冷蔵庫を開けた。



そんな俺に、杏光がうしろから俺を抱きしめる。



自分が挙動不審になったのを感じながら、冷蔵庫から材料を出した。



今日作るのはガトーショコラ。



「はい…これ湯煎して」

「はーい」



杏光にチョコとボウルを渡すと、俺から離れて湯煎をはじめた。



俺は薄力粉を量りまーす。



杏光の視線を若干感じながら秤にボウルを乗せる。



「熱っ」



ん?



杏光を見ると、やけどしたっぽい…?



「大丈夫!?」



杏光の手をつかんで水道の流水にあてた。



杏光を見ると、へへっと笑った。



なんで笑ったのかよくわからないけど、可愛いから俺も笑い返した。



ガトーショコラはほぼ完成に近づいてきた。



「はい、あーん」



余ったチョコをスプーンですくった杏光が俺に食べさせる。



「んまい?」

「うん」

「あたしも」



そう言った杏光が、俺を引き寄せて濃いチュー…。



んん?



口の中のチョコ、杏光に取られた…。



唇を離した杏光が、俺の腰に腕を回したまま俺を見る。



俺の顔、めちゃくちゃ赤いのが見なくてもわかる…。



あっつい…。
< 150 / 350 >

この作品をシェア

pagetop