好きの海に溺れそう
しばらくキスしてから身体を離した杏光は満足そうに笑った。



「さ、お風呂~」



ハンガーに浴衣をかけてから、脱衣所に行って自分で下着を脱いだ杏光は、「寒いから」と言って先にお風呂に入った。



俺はさっきので暑いけど…。



お風呂から上がって、杏光の髪の毛をタオルで拭いてあげる。



その間、杏光はドライヤーで浴衣を乾かしてた。



「帰ったらクリーニング出さなきゃな~」

「濡れちゃって残念だね」

「本当だよ~」



一通り拭き終わったので、浴衣を乾かしてる手を止めてもらって、ドライヤーを受け取った。



「ラブホのドライヤー、意外と風力強かったりするんだよね~」

「…」



ドライヤーで髪の毛を乾かしてたら、ふいに杏光が言った。



黙ってるのは、ドライヤーの音でよく聞こえないからじゃなくて、嫉妬してるからです。



ただの幼なじみだった頃、杏光は面白がって俺に、彼氏とどうこうしただの、あそこのラブホがよかっただの言ってた。



だから、俺は杏光の元彼との色々を知ってるわけで…。



幼なじみだからこその弊害だよね…。



本当に思い出したくないから普段は忘れたことにしてる。



でも今日は元彼にも会っちゃったし杏光はラブホテル慣れてるしで思い出しちゃったじゃん!!



やだやだ…。



ドライヤーを切って杏光にこっちを向かせた。
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