好きの海に溺れそう
笑ってる海琉がムカつく~。



「あ、じゃあ俺こっちだから」

「あっ、そうだ、今日バイトじゃん…」



ゆっくりと手を離す。



この瞬間が一番嫌い。



「頑張ってね~」

「ありがと」



明るく言って、分かれ道で別れる。



こんな分かれ道なければいいのに。



家に帰ったら女物の靴。



最近家に帰るとだいたい女物の靴がある。



昼麻ちゃん大変そ…。



お母さんは元々仕事で帰るのが遅いし、多分あたしも家に帰るのが遅いって思われてる。



だからあたしも鉢合わせしないように外に出てる。



今日もどっか行ってよう…。



と思ったら、今日は少し遅かったみたいで、悠麗が部屋から出てきた。



「は…? なんでいんの?」

「なんでって…。ここあたしん家だし」

「だっていつもいないじゃん…」

「あたしが気利かせて出てってやってんの」



そこまで言ったとき、悠麗の部屋から女の人の声がした。



それは昼麻ちゃんの声よりも少し低くて…。



悠麗の部屋から、ワイシャツを1枚着た知らない女の子が出てきた。



年は多分悠麗と同じくらい。



え、誰…?



「お姉さんですかぁ~?」

「まあ…」

「超美人!」



知ってる…。



全然嬉しくない…。



なに? なんなの?



「もうお前帰れ…」

「え~?」

「うっせんだよ、帰れ」



その女の子は口をとがらせて悠麗の部屋に戻った。



しばらくして服を着て出てきたその子は帰って行った。
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