好きの海に溺れそう
「じゃあ玖麗ちょうだい」

「いいよ」



玖麗は本当に良い子だ。



玖麗からスプーンを借りて一口スープをすする。



「やっぱり親の教育がいいんだよ。お母さんも実咲ちゃん見習いなよ」

「何言ってんの。あんただってあたしに育てられたでしょ」

「それはアレだよ。お父さんの教育がよかったんだよ」

「なーに言ってんの。あんたも悠麗もほとんどあたしに育てられたんだよ~。そのときからお父さん忙しかったんだから」



はいはい…。



でも確かに、記憶に残ってるのはお母さんのこと。



お母さんは出版社でライターとして働きながら、あたし達2人をよく育ててくれた。



年子だし、本当に大変だったと思う。



お父さんはお父さんで帰ってくるたびにめちゃくちゃ可愛がってくれてたけどね。



家にいる時間自体はそれほど長くないのに、記憶に色濃く残ってるから、それほど存在感のある父親だ。



愛されてる実感はある。



…なんてしんみりしてたら、玖麗と悠麗が食べ終わってた。
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