好きの海に溺れそう
冷蔵庫を開ける。



うーん、あんまり大したもの入ってないなあ…。



野菜はいっぱいあるけど…。



首をひねりながら中にある食材を確認してたら、杏光にうしろから飛び乗られた。



「う゛っ…」



突然のことでよろめく。



「重い…」

「重くなーい」



そのまま杏光が俺の頭に自分の顔を埋めてぐりぐり。



かわいいけど悠麗たちの前で恥ずかしいから!



「何イチャイチャしてんのそこ…」



案の定、悠麗がこっちを見ながら引いてるよ…。



「うっさい」



杏光が俺にしがみつきながら悠麗に言い返した。



「姉のそういうの見たくないんだけど…。きもい…」

「だったら見んな」



杏光はそう言いつつ俺から降りた。



「何入ってた?」



俺のうしろから冷蔵庫をのぞく。



「なんもないじゃん」

「そうなんだよ…何か作るなら買いに行かなきゃ」

「海琉買ってきて?」



杏光が上目遣いでお願いした。



「俺って杏光の奴隷だっけ?」

「そんなことないよ。あたしの大好きな人」



うっ…。普通に照れたじゃん…。



バカ!



「じゃあさ杏光、一緒に買いに行こうよ」

「いいよ」



というわけで、財布を持って二人で家を出た。



出かけに玖麗たちに杏光が声をかける。



「じゃあ行ってくるね~。夜ご飯楽しみにしてて~」

「いや、作るの俺なんだけど…」



俺の文句は無視される。



「いってきまーす」



杏光としっかり手を繋いで家を出た。
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