きみが嘘をつくから。



大輝に腕を引かれ、そのまま大輝の教室に入った。


大輝はドアを閉めて近くの席へと座ったので、私はその隣の席に向かい合うように座った。



「話って何?」

いつの間にか涙は引いて、落ち着いてきた。

まだ目元がヒリヒリするけど。


「乃々香ってさ、あいつのこと好きだろ。」

あいつってのは春馬の事だろう。


今それは言わないでほしい。



「……。」

「あいつもさ、自分では気づいてないだけで乃々香のこと好きだよ。」

嘘だ。


春馬はそういうの興味ない。



「何その自信。」

「春馬は乃々香以外の女子の話したことねぇもん。」

その言い方、私の話はしてくれるんだ。




「慰めようとしてんの?」

ほぼ振られたみたいな感じの私にはそれが逆に傷を抉られてる気分だった。



「違う、…いや、違くもねぇけど、そうじゃなくて!」

膝の上の拳に力が入ってる。


一度力なく俯いて、何かを決意したように私を見つめた。





「好きだよ。俺と付き合って。」


「…へ?」

唐突な告白に変な声が出た。


驚いてどうしたらいいかわかんなくなった。


もしかして、春馬もこんな気持ちだった…?



「お前が春馬の事好きってのは分かってる。でも、俺だって前から乃々香の事好きだよ。」

今までも告白されたことはあったが、直接言われたのは初めてだ。


顔が赤くなっているのが自分でもわかる。



それに、と大輝は言葉を続けた。


「もしかしたら、俺等が付き合ってるのを見て、春馬が自分の気持ちに気づくかもしれない。そうならなかったとしても、俺を利用していいから春馬の事諦めて。いやんなったら、振ってくれていいから。」


今までのどれよりも優しい声だった。



それから「期間限定彼氏てきな。」と言葉を付け加える。


大輝を利用して嫌になったら振るなんて、そんなことできないよ。



二人の間に沈黙が流れて、遠くでドアの開く音がする。


あぁ、春馬だ、って思った。


足音が段々近づいて、体が固くなっていく。



また、無遠慮な彼は私の腕を掴んで引き寄せた。



「俺のこと嫌い?」

体勢を崩され大輝の胸元に倒れこむ。


大輝の胸の音が直接耳に響いて、足音はもう聞こえなくなった。



早い鼓動に胸が苦しくなる。


言葉が出なくて首を振った。



「付き合う?」


掴まれてる腕が少し震えてるのに気づき、私は頷いた。


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