眠り王子が完璧に目覚めたら



「い、いや、別に…」


そう言いながら、翼は段ボールを押してどんどん俺から離れて行く。
残念ながら俺の湧き出る感情の中には、“大らかさ”とか“寛容”といった類のものはなかった。
どんどん離れて行く翼にじりじりと歩み近寄り、その段ボールを取り上げた。

こいつが和成か…

城はマグマのような嫉妬や妬みやジェラシーが、自分自身の全てを支配するのが分かった。
その段ボールの中には、和成と仲良くツーショットで撮った写真達が山ほど入っている。


「ふ~~ん、こいつがクソ野郎か…?」


城が一枚取り出してそう言うと、翼はすぐに取り返した。


「いずれは捨てようと思ってます…
でも…」


城は目を細め無表情の顔で、翼の後に続く言葉を待っている。


「気持ちに整理がついたら、その時にちゃんと処分します…」


翼はそう言うと、その段ボールをまたガムテープで止めクローゼットの奥の方にしまった。

でも、城のイライラは全く治まらない。


「何でまだ気持ちの整理がついてないんだ?
ちゃんと話し合って別れたんだろ?」


翼はまた勝気な目をして城を睨む。


「話し合ってないから、整理がついてないんです!
和成が一方的に別れを切り出して、その後姿をくらませて…

だから、別れるにしても、そんなんじゃなくて、私の気持ちとか想いも聞いてほしかったんです!

だって、結婚まで約束してて、和成が就職したら結婚する予定だったから…」


翼は泣くまいと我慢しているのは分かるが、城は同情する気はさらさらない。







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