たった二文字が言えなくて
たった二文字が言えなくて

俺は人気者

「凜くんってほんとかっこいいよね」



俺の腕に自分の腕をからめてくる。



「そう?ありがとう」



……なんだっけ。
この子の名前。



「ずるいよー。独り占めはダメー」



香水をぶら下げて歩いてるんじゃないかってぐらい、臭い女が隣に走ってくる。



「ほらほら、みんな仲良くね」



なにがいやだって、こんなふうにみんなにいい顔してる自分が1番嫌い。

でも、なんでもいいんだよ。そんなの。



「今日はあたしの日だよね?」



また別の女の子がやってくる。



「そうだね」


「じゃあ明日はあたしだよー?」


「うん。また明日ね」



愛想よく手を振っておく。



「あたしの家誰もいないから……」


「ん。わかった」



誰でもよかった。
本気になんてなれる奴はいなかった。

俺が笑顔を振りまけば、誰でもついてくるんだと中学の頃悟った。



「凜くんといるとほんと自慢になる」



こういうこともよく言われる。
俺はブランド品かよ。

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