糖度高めな秘密の密会はいかが?
日下部さんは昨日の帰り際から機嫌が悪い。

おはようの挨拶は無視したくせに、職権を使い用事ばかりを言いつけてくる。

普段、仕事中にこんなにも名字を連呼したり、デスクまで呼ばれたりはしない。

何だか、調子狂うな───・・・・・・

「秋葉さん、先日のタオルハンカチの見本が届きました。色合いとかどうかな?」

「手触りはふわふわっ気持ち良いし、想像通りの色と刺繍です。部長のオッケーが出れば生産に入って下さい」

来春から販売予定のタオルハンカチの色違いの見本と資料を持ち、見かけは私に確認に来たように見えるが・・・本題はこっち。

「ゆかりっ、日下部さんと何かあったの?」

資料を使い、やり取りをしているような振りをして話かけて来たのは、後輩だけれども同い年の杉野 綾美(すぎの あやみ)。

「昨日、機嫌を損ねてしまったみたい…特に何をしたって訳ではないと思うんだけど…」

「そうなんだ…今日はめちゃくちゃ機嫌悪そうだよね!」

「職権乱用してるし、扱いめんどくさいっ」

ヒソヒソと話込んでると背後から悪寒がし、丸めた資料らしき紙の束で頭を軽く叩かれた。

「秋葉、杉野、無駄話禁止。全部聞こえてるから!」

「わーっ、すみません、デスク戻りまぁす!」
「…すみませんでした」
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