紳士的?その言葉、似合いません!
「凛華さんは何かリクエストありますか?」
「リクエスト以前に行きたくないんですけど…」
「おや、つれない人ですねぇ」
クスクスと楽しそうに笑いながらも目的地を決めたようで危なげなく車を進める都築さんを横目でチラリと見る。
こうして見るとほんとに容姿はいいのに何故こんな中身が残念になってしまったのだろうか。知らなかったあの頃が懐かしい。
会社の、特に秘書課にいない夢見る女の子たちよ。世の中知らない方がいいこともあるんだよと懇々と言ってあげたい。そしてできることならわたしもそっち側でありたかった。
すれ違う車のライトが眩しくて目を閉じる。
「…聞いてもいいですか?」
「おや、何でしょう?私に答えられることならばどうぞ」
どこか楽しげにも聞こえる声音に何度目かもわからないため息をこぼしつつわたしは隣の人に目を向ける。
「何故わたしなんですか」
「…何故、とは?」
信号で車が止まり、前を向いていた都築さんがこちらを見る。淡い光に照らされて印象的なオッドアイと目が合い、自然とその視線から逃げるようにわたしはうつむいた。