・キミ以外欲しくない
社内で誰も知らないであろう副社長の私生活に、簡単に踏み込んでしまった自分が恐ろしい。
しかも副社長が自然体過ぎて、違和感を感じていない私がいる。


「あれ?」


バスタブにお湯がはってある。
確か副社長はシャワーを浴びていたはずだから、わざわざ私の為にお湯を入れておいてくれたのか。
こんなに優しくしてくれる人を、女性が放っておくわけがない。
なのに、社長は女性の影が見えない副社長を心配していたんだよね?


「……やめよ。私には関係ない事だし」


そもそも、お世話になることになったのも仕事の為だ。
副社長の行動一つ一つにドキドキしていたら身が持たないよ。


置かれているバスグッズを手に取り、繁々と見つめる。
「お金持ちって、使っている物ひとつ取っても違うんだなぁ」と、参考になりそうな物を物色する。

軟水が出てくるシャワーヘッドに、ジャグジー有り。壁にはテレビ完備。
湯上りに使うバスタオルは、フワフワで。どこぞのブランドの物。


ターゲットは女性だけれど、こんなに贅沢な暮らしをどれだけの人が送れるのかな。


ふと、疑問が浮かんでしまったから。
未だ仕事をしているであろう副社長が居るリビングへ速足で向かった。
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