最後の恋 【番外編: 礼央目線】
1年前の春休みに入ってすぐ、紫乃は母親の実家のある大分へ母親と一緒に引っ越した。


そして春休みが終わる頃、一度だけ一人で戻ってきた。


俺達と、そして松野さんに会うために。


俺は…遠く離れる紫乃を支える自信が正直なくなっていた。


近くにいても自分の気持ちを100%紫乃に注ぐ事が出来なかったのに…離れたら余計に。


紫乃の気持ちを受け入れた責任と義務だけに縛られていたあの頃、俺を見て真斗が言った。


「もう自分を責めるな。俺は大事なお前たち二人には幸せでいてほしいんだ。だから、紫乃のことは俺に任せろ。」


俺は手を差し伸べられたことに心のどこかでホッとしたと同時に、それ以上に情けなくなった。


親友の本当の気持ちに気づけなかった自分を恥じ、真斗に対しても大きな罪を犯した自分を責めた。


「誰にでも間違いはあるし、お前だけが悪いわけじゃない。お前が間違ったのだとしたら、それは俺の間違いでもある。紫乃の気持ちに応えてやれ…そう言ったのは俺だからな。」
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