最後の恋 【番外編: 礼央目線】
確かにあの頃、そんな事を真斗には言われた。


「あの時は…紫乃を見て不憫になったんだ。俺では代わりにはなれないし、だからお前に押し付けた。だけど結局、二人をさらに傷つけることにしかならなかった。本当に悪かったと思ってるよ。」


けど、それを決めたのは俺自身であって真斗のせいでも何でもない。


「お前に言われたからじゃない。選んだのは俺なんだからお前が謝る必要はないよ。それに俺の方こそ友達なのに…何も気づかなくてごめん。」


今しかないんだと思った。


たとえまた傷つけることになっても、これ以上間違いを犯し続けることの方が紫乃を今よりもっと苦しめることになる。


紫乃から、最後に会いたいと電話をもらった。


松野さんに会ってきた帰りだろうか。


久しぶりに会った紫乃の頬には涙の跡がハッキリと残っていた。


「紫乃…ごめん」


そう切り出した俺に、紫乃は笑顔でこう言った。


「礼央、今まで…ありがとう。最後に、一つだけワガママ言っていい?」


それに黙って頷くと


「今日からまた普通の幼馴染に戻ろう。」
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