最後の恋 【番外編: 礼央目線】
最愛の人
後で電話をすると言った彼女の電話を待っていた。


着信音にドキッとして画面を見ると、そこに見えたのは紫乃の名前。


「もしもし…」

『この馬鹿…。振られて当然。礼央は自分に婚約者がいるなんて噂があるのも知らなかったわけ?』


俺に婚約者…?


「 いや…全くの初耳。」


それから、はぁ…と大きなため息が聞こえると


『男でしょ。ずっと好きだったんでしょう。再会してやっと好きだと言えたんでしょう。だったら何があっても杏奈を幸せにして。何があっても二人で幸せになりなさいよ。婚約者の誤解はこっちで解いておいたから。』

「……」


紫乃の勢いと、俺がずっと杏奈の事を好きだった事を知っているような紫乃の口ぶりに驚いて直ぐに言葉が出なかった。


『コラ、ちゃんと聞いてんの?』


すかさず紫乃から鋭い突っ込みが入る。


「あ…あぁ、聞いてる…」

『だったら返事くらいしなさいよ。ったく…』
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