君があの子に、好きと言えるその日まで。完
「それを口実に、星岡君と一緒に美術室に遊びに来てよ。そうしたら、星岡君も、きっとまた、来栖先輩と自然に話せるようになるかもしれないから……」


私の提案に、一之瀬君は言葉を失っているようだった。

本当に無茶なお願いをしているってわかってる。

だけどきっと、一之瀬君も私と同じように、親友の星岡君の幸せを願っているはずだから。


「……分かった。それがもっちーの願いなら」


重たい雲がゆっくりと広がって、ぽつぽつと、冷たい雨粒を落とし始めた。

アスファルトに落ちた雨が、黒くて丸い跡をいくつも作っていく。

緊急中止のアナウンスがグラウンドに流れているのが、雨音に混じってかすかに聞こえた。


……行かなきゃ。きっと、星岡君、いつまでも戻ってこない私を心配している。
他の実行委員も慌ただしく動いているだろう。



私は、自分の想いを押し殺して、好きな人の元へ走って向かった。







自分でも、なんであんな提案したんだろうって思ってる。

でも、星岡君に幸せになってほしいのは、ほんとだよ。


それだけは、ほんとなんだよ。

だって、好きな人には笑っていてほしいから。

まだ十七歳だけど、まだまだ子供だけど、その気持ちだけは本物だって、分かってほしい。
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