君があの子に、好きと言えるその日まで。完
「……妹は、翔太に好きと伝えることができなかったのに、私が翔太に伝えるなんてこと、絶対にできない……っ」

まさか、そんな残酷な真実が残っていたなんて、思わなかった。

はやく気持ちを伝えて付き合ってほしいと願っていた自分が、今とても恥ずかしい。消えてなくなりたい。


「妹の気持ちから逃げ続けていた翔太を許していいのか、分からないっ……、好きだけど憎いっ……こんな自分が一番許せないの」


どうして私は、思いが通じ合うことがゴールだと思っていたのかな。

思いが通じ合えば幸せになれるだなんて、勘違いしてたのかな。

きっと皆、伝えたいけど伝えられないことや、行き場のない気持ちがあって、もどかしさに苦しんだりしている。

私も今まさにそんな状況なのに、どうしてここまで想像することができなかったんだろう。

自分本位にキューピッド役を担って、無理やり接点を作ろうとしたりして。


自分が恥ずかしい。


「先輩……、先輩、どうか自分をそんなに責めないでください」

なんで、今こんなに泣きそうになっているんだろう。

泣くな、泣きたいのは先輩なんだ。

じゃあ、なんて言葉をかけたらいい。好きな人の好きな人が、今こんなにもボロボロになって泣いている。

心の悲鳴が聞こえる。助けてあげたい。抱きしめてあげたい。でも、言葉が出てこない。


「来栖先輩、ひとつだけ言えることは、妹さんは先輩が先輩自身を嫌うことを、一番嫌がると思います……」

来栖先輩の震えている手を握って、私は真っ直ぐ彼女の瞳を見つめて答えた。

先輩の、大きくて色素の薄い瞳が、涙に濡れて揺れている。


「どうか、自分を責めないでください……、そんなこと、妹さんは願ってないと思います……」

「望月ちゃん……」

「偉そうに、本当ごめんなさい」


かっこわるい。震えている先輩の手を止めるためにしっかり握ったのに、自分の手も震えている。

生きているうちに伝えなきゃってこと、先輩はきっと痛いほど実感しすぎてしまった。

それなのに、妹さんのことを思って、がんじがらめになっている。


先輩が星岡君の話になると寂しそうに目を伏せるのも、

星岡君が先輩のことを切なそうな瞳で見つめるのも、

今すべての理由がここで繋がって分かった。


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