全ての記憶を《写真》に込めて



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「和久井くんだけずるい!」
「晴!俺にもくれ!」

「み、みんなも食べていいよ」

昼ごはんを屋上で食べる。
もうそろそろ秋が本格的に始まり、冷えてきた。
結構寒い。

「は、晴くん…、どうかな?」
「別に、普通に美味しいと思うけどぉ」
「良かったぁ」

お礼、と言って卵焼きを作ってきてくれたらしいから自分のお弁当と一緒に食べる。
周りの奴らがうるさいけど。

「あ、彩月!見て見て!」
山が綺麗だよ、と色付き始めた山を見てそいつを呼ぶ。

「わぁっ、凄い!綺麗だね!」


今までよく見てなかったから気づかなかったけど。
うちの学校の屋上ってこんなに景色がよかったんだ。

「よしっ!こうなったら写真撮るしかないね!」
「どうなったのか全然わかんないんだけど」
「晴くんも、翔くんも茉莉ちゃんの横に並んで」
まぁ、病気のこと聞いて断れるわけない。
そう、これは単なる思い出作りなのだ。



「あんたは入んないの?」
「え、だって写真撮る人いなくなっちゃうから」
また今度一緒に撮ろう、と笑う。




「いい?撮りますよー」


カメラを構える。


あぁ、何でこんなことしてんだろうね。
写真が、撮られるのが嫌いだったはずなのに。


「笑ってね」



「はいチーズ!」




自分が可笑しくて、笑ってしまう。



_______________パシャ。






「え!は、晴くん!笑ってくれた?」
急いで駆け寄ってくるこいつ。
「ちょっとだけねぇ」
「癖、とかじゃないよね?」
癖、か……。
「あんたなら見てわかるんじゃないのぉ?」
ちょっといじわるを言ってみる。
まぁ、分かるとは思わないけど。
こいつはどっちを取るんだろうか。

「癖じゃないと思う」


そして、優しく微笑んで、
「笑ってくれてありがとう」

何でこんなことだけで感謝してくれるのだろう。


「…っ今回だけだからねぇ」



あぁ、確信した。
俺はこいつの笑顔に弱いのだ。





それは、きっとこいつに惚れているからだろう。
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