全ての記憶を《写真》に込めて
それから少し公園で休んだ。
このまま帰ったら先に家に着いているはずのお兄ちゃんに見られてしまうから。
「はぁ、泣かせるつもりはなかったんだけどぉ」
「ごめんね」
「変なこと聞いた俺が悪かったと思ってるから謝らないでよ」
それから少しの間、沈黙が続いた。
聞こえるのは通行人の声のみ。
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
「写真の撮り方、教えてよ」
急なお願いだった。
でも、写真に興味を持ってくれたことが嬉しかった。
「わ、私なんかでいいの!?」
悲しかったことも驚きと嬉しさで引っ込んだ。
「近くにあんた以外に頼める奴なんていないでしょ〜」
そう言って、自身のカバンを漁る晴くん。
そこから出てきたのは私の持っているカメラにタイプが似ているカメラ。
「前安いの見つけてさ、買ってみたんだけど使い方がよくわからないんだよねぇ」
「買ったの?」
「前にやってみるって言ってたでしょ」
そっか、本当にやってくれるんだ。
「で、最初に何撮ったらいいの?」
「えっと、まずは自分が撮ってみたいものをどうやってとるか考えてみるん…とか?」
「へぇ」
撮りたいもの、かぁ。
そう呟きながら、公園の中を歩いた。
幸い、今の公園は少し色づき始めた葉や楽しげに遊ぶ少年少女らがいる。
取れる材料は沢山あるのだ。
「どう?晴くん決まった?」
「……決まった」
そう言ってこちらを向きシャッターを切る。
私は唖然とするしかなかった。
前と同じようなことが起きた。
「は、晴くん!また撮ったの!?」
「あんたは俺の写真撮ってるのに、俺だけだめとかありえないからねぇ」
仕返し、と撮った写真を眺めながら言う。
な、なら………。
「晴くん!」
名前を呼ぶ。
「な、」
何、と言おうとしたのだろう。
しかしその前にシャッター音が邪魔をした。
「はぁっ!?急に撮らないでよねぇ!」
「仕返し、だよ」
それから、お互いたくさんの写真を撮った。
驚いた顔、怒ったような顔、そんな顔から笑った顔に変化していった。