全ての記憶を《写真》に込めて



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本当は忘れて欲しくなかった。

だけど、応援するには不器用なオレの性格じゃあんな言葉しか出てこなかった。



あれ以来、オレは毎日会いに行っている。
でも、時々寝ている時もあって。



「こんにちは」
「いらっしゃい」
「彩月、寝てるんですね」
「そうね〜、全く眠り姫みたいだわ」

眠り姫、ねぇ。

「ほんとですね」

本当に、眠り姫だ。


「手術って…、」
「明後日らしいわ」
会いに来る?と雪乃さん。

「はい」

先生からも午後は休んでいいと言われた。
今まで真面目に授業受けてきたからって。
まぁ、一度サボった時もあったけど。

でも、一番の理由は……。


『先生方が色々言っても来なかったのに和久井みたら来ただろ?それだけ御園にとって和久井は大事なんだよ』

と、言ってくれた。

明智先生で良かったと思った。

「彩月、明後日は頑張ってねぇ」



髪を掬い、キスを落とす。


「ふふ、晴くんったら髪へのキスの意味知ってる?」

「知ってますよ、“思慕”、でしたっけ?」

今まではこんな気持ちになるなんて思わなかった。
こんなに人を恋しく思うなんてなかった、と思う。

「じゃあ、また明日きます」

「えぇ、彩月も待ってるわ」




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