愛されたいのはお互い様で…。


務の事、信じられないとも、本気で思ってはいない。一緒に居ない時間の方が長いから、不安なだけだ。不安を埋められる程深いつき合いが出来てないって事だ。
だから根拠もなく勘繰ってみたくなる。ううん…勘ぐってしまう。一人の時間は尊重したいという事と矛盾してしまっているけど。
最低の想定は、そうなった時に、深く傷つかないで済むかも知れない。そう思って無意識にしてるのかも…。
みんな、別れる事になった時、思いもしなかった事で傷ついたなんて言うからだ。

浮気されてるんじゃない?最初から自分は二番目なんじゃない?なんて、ちらっと思っていれば、それが現実になった時、そんな事もあるんだって…、飲み込みが早いかも知れない。
これはきっと自覚はなくても、前回の…、妻帯者と知らずつき合っていた事が、ずっと消えない影を落としているんだと思う。
倦怠期ってあるのかな…。怖いモノに例えて、ドタキャンの時の様子を探ったつもりだったけど、特に動揺も見せないし…。心臓に毛が生えているのかな。
確かに見間違いでは無かったと思うんだけど…。別人だったのかな。ううん、務を見間違えるはずは無い。
仕事関係の人と行く事になったのかも知れないし、私とは行けなくなったから同僚でご飯につき合ってくれる人が居て行ったとかかも知れない。…それは違うか。無理だって連絡は務が先だった…。約束の時間前のキャンセルだった。見かけたときは丁度約束の時間、違う、もうグラスを手にしていたからそれよりも少し早くから居たってことになる。
あの時間に店に行けてるなら、私とだって行けてる事になる…。手前の時間からの仕事でなら、その仕事の誰かと、私との約束の店に行った事、話せない事じゃないのに。
…言わないのは、狡さからの“優しさ”なのかも知れない。

誰かとは行った…私とは行けなくなった、という部分ではその通りだ。誰とどんな理由で居たのか、私から聞けばはっきり解る事だ。…だけどそれをしないのは、気にしない冷静なふりで、実は真実を知るのが怖いと思っているからだ。

務は私が一人で飲んで酔っていた原因を詳しく知らない。そういう状況だから、男関連だとは思ってはいただろうけど。
私が話さないから、聞けないのかも知れない。それが辛く嫌な事なら、ただ、忘れてしまえばいいだろう、と思ってくれているのだろうから。
にしても…言ってくれないとどんな風に思ってるかなんて解んないし…。
お互い、言葉が足りないんだ。少なくとも、私は色々言って欲しいと思っている。
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