愛されたいのはお互い様で…。

Ginzirouの番号を知らなかったから、それを伝えると、さらさらと書き込み名刺を渡してくれた。
受け取って見ると、お店の番号なのか、携帯番号が書き足された物だった。
元はデザインされた店名だけが書かれた名刺…番号は教えない事が基準なのかな…。お店なのに?
必要以上に知られたくないって事かな。趣味の要素が強いみたいだから。

何故、番号が元から印刷されてないのですか、なんて聞くと、ややこしい話になるのかな…。なりそうだ…止めておこう。


「どのくらいの日数で出来ますか?あ、勿論、急かしているのではなく、普通にでって事です」

「私次第です」

にこやかに、極々当たり前の返事をされた。確かに。機械が作るのでは無い、作業は伊住さんのさじ加減?といったところだろう。

「徹夜したら思っているよりずっと早く出来ますし、そうですね…やりたくないなぁと思えば、いつまでも出来ませんね」

…ハハハ。機嫌を損ねでもしたら待てど暮らせど私の足を入れる事が出来ないってパターンもありって事ですか…。

「やる気スイッチを、入れるかどうかですか?」

「そうですね」

涼しい顔をしている…。んー…例えば、代金を前払いにしておくような事はしなくていいのだろうか。そうしてしまえば、やらない訳にはいかないだろう。

「伊住さんのスイッチは…どこで、何なんでしょうね」

「紫さんですよ」

「…え?」

「紫さんの靴を作るのですから、紫さんです」

「あの…」

解らない…これは哲学的な考え方をしたらいいのだろうか。…理念。?、もう…返事に困る。

「お茶を飲みに来てくださいと言いました。こうして来てくれる事で…私のやる気スイッチが入ります、という事です」

「では、進み具合を偵察しに来ればいいのですね」

「偵察……違いますよ。偵察とは、こっそりです。こっそりでは駄目です。こんな風に面と向かって来てくれないと。任せっぱなしにせず、様子を見に来てください」

「解りました。では不意に来て、早くしてくださいって、お尻を叩けばいいんですね」

「ハハ、さすがにお尻は叩かれたくないかもです。…それはちょっと…」

…これはジョーク?それとも本気でお尻を叩く話?振っておきながら、返しがとても難しい…。

「違いますよ?それは言葉の例えですから。急かすつもりはありませんから。マイペースでどうぞ。よろしくお願いします」
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