彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
「信じられない?それとも困っている?嫌かな?」

信じられないし、とにかく困惑していた。
嫌では・・・ない。決して。

でも。

思わず視線を落としテーブルに置かれたカクテルを見つめていると、副社長が私の手を握ってきた。

「早希さん」

びくっとして副社長を見た。

「深く考えなくてもいい。俺のことが嫌いでなければ、とりあえずこうしてたまに会ってくれるだけでいいから。俺にだって会社を離れてリラックスする時間があってもいいだろ?」
と穏やかに言った。

それはもちろん。

社長だって副社長にはプライベートがないと心配していたのだから。
確かにそれならば、私も副社長に会いたい。

この優しく穏やかな笑顔にすっかり魅了されてしまっていた。

「私もお会いしたいです」

恥ずかしいけど、副社長を見つめてそう言った。

「よかった。じゃあ、乾杯して改めて自己紹介でもしようか」

副社長は水割りのグラスを持ち上げ、どこかの俳優かと思うほどの魅惑の笑みを浮かべた。
おそろしいほどの色気だ。

この先大丈夫かな、わたし。



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