彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
時間通りに地下駐車場に下りて行くとすでに副社長がいた。
「早希さん、ここ」
「副社長、お待たせしました」
うわ、やっぱり高級車だ。
すでに緊張する。
さっと助手席のドアを開けてくれる。やっぱりやることがスマートだ。
「ありがとうございます」
ニコッと笑ってシートに沈み込み、副社長が乗り込むのを待った。
「副社長、今日はいつものお店ではないんですか?」
「今夜はどうしても早希さんを連れて行きたい場所があってね。少し遠いけど、一緒に行ってくれる?」
「ええ。いいですけど、どちらに?」
「行ってからのお楽しみで」
副社長はいつもの穏やかな笑顔だ。
私はその笑顔を見て安心感に包まれる。
「はい。楽しみにしてます」
「じゃ、行こうか」
副社長が運転する車は高速道路に入った。
どんどん都心から離れていく。
どこに行くんだろう。
流れる景色を見ながらこのままどこまでも副社長に付いていきたいと思った。
ああ、こんなに副社長に惹かれてしまっている。
私達の関係は先が見えないものなのに。
副社長の息抜きのための会話の相手?飲み友達?何だろう。私達の関係を正しく表す言葉はあるのだろうか。
そんな不安定な関係なのにしがみついていたくなるのは、相手がこの人だから。
「着いたよ」
副社長の声に顔を上げ正面を見ると、わくわくするような景色が広がっていた。
日が沈み、森の中に明るく浮かぶ建物が見える。
リゾートホテルだろうか。
周りの木々もライトアップされ、幻想的だ。
まるで、ここだけ現実から離れた異世界のよう。おとぎの国なのかな。
車を建物に横着けすると、さっとスタッフがドアを開けてくれる。
「久保山様、お待ちしておりました」
副社長は私の腰に手を回して建物の中に歩き出す。
「副社長ここって?」
スタッフに聞こえないように小声で問いかけた。
「たまに使っている隠れ家みたいな所だよ」
そう微笑んだ。
副社長がフロントに向かい、私だけロビーの奥にあるウッドデッキのテラス席に案内される。
大人しく従っていると私の前にグラスが置かれた。
「地元産のブルーベリーを使った果実酒です。アルコール度数は低めに炭酸も控えめなっておりますので、飲みやすく仕上げてあります。よろしければどうぞ」
ウェイターの男性が軽く頭を下げて去っていくと私は一人きりになった。
フロント前のラウンジには数人、スタッフと客とみられる姿があるが、このテラスには10席程あるのに誰もいない。この時間帯に客はレストランにいるのだろうか。
ウェルカムドリンクに手を付ける事をせずに、ウッドデッキの先につながる森の闇を見つめた。
「早希さん、ここ」
「副社長、お待たせしました」
うわ、やっぱり高級車だ。
すでに緊張する。
さっと助手席のドアを開けてくれる。やっぱりやることがスマートだ。
「ありがとうございます」
ニコッと笑ってシートに沈み込み、副社長が乗り込むのを待った。
「副社長、今日はいつものお店ではないんですか?」
「今夜はどうしても早希さんを連れて行きたい場所があってね。少し遠いけど、一緒に行ってくれる?」
「ええ。いいですけど、どちらに?」
「行ってからのお楽しみで」
副社長はいつもの穏やかな笑顔だ。
私はその笑顔を見て安心感に包まれる。
「はい。楽しみにしてます」
「じゃ、行こうか」
副社長が運転する車は高速道路に入った。
どんどん都心から離れていく。
どこに行くんだろう。
流れる景色を見ながらこのままどこまでも副社長に付いていきたいと思った。
ああ、こんなに副社長に惹かれてしまっている。
私達の関係は先が見えないものなのに。
副社長の息抜きのための会話の相手?飲み友達?何だろう。私達の関係を正しく表す言葉はあるのだろうか。
そんな不安定な関係なのにしがみついていたくなるのは、相手がこの人だから。
「着いたよ」
副社長の声に顔を上げ正面を見ると、わくわくするような景色が広がっていた。
日が沈み、森の中に明るく浮かぶ建物が見える。
リゾートホテルだろうか。
周りの木々もライトアップされ、幻想的だ。
まるで、ここだけ現実から離れた異世界のよう。おとぎの国なのかな。
車を建物に横着けすると、さっとスタッフがドアを開けてくれる。
「久保山様、お待ちしておりました」
副社長は私の腰に手を回して建物の中に歩き出す。
「副社長ここって?」
スタッフに聞こえないように小声で問いかけた。
「たまに使っている隠れ家みたいな所だよ」
そう微笑んだ。
副社長がフロントに向かい、私だけロビーの奥にあるウッドデッキのテラス席に案内される。
大人しく従っていると私の前にグラスが置かれた。
「地元産のブルーベリーを使った果実酒です。アルコール度数は低めに炭酸も控えめなっておりますので、飲みやすく仕上げてあります。よろしければどうぞ」
ウェイターの男性が軽く頭を下げて去っていくと私は一人きりになった。
フロント前のラウンジには数人、スタッフと客とみられる姿があるが、このテラスには10席程あるのに誰もいない。この時間帯に客はレストランにいるのだろうか。
ウェルカムドリンクに手を付ける事をせずに、ウッドデッキの先につながる森の闇を見つめた。