クールな外科医のイジワルな溺愛


「花穂は素地がいいんだから、もっと磨きな。もったいないよ」

「あはは、ありがとうございまーす」

笑ってごまかし、トレーを返却口へ持っていく。食道を出る前に、オシャレ人間たちの何人かが私を指さして笑ったような気がした。

悪いけど、それくらいのこと気にして泣いているほど暇でも純粋でもないのよね。

私は世にもダサいコーディネートで、でも胸を張ってずんずんと部署までの廊下を早足で進んだ。


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やっとキリがついた。パソコンをシャットダウンして時計を見ると、午後六時。今日は早い方だったな。

まだ仕事中のナミ先輩に挨拶をして、さっさと家路につく。残業代は欲しいけど、無意味に会社にいたくはない。

「あ~ああ~ん、つっかれったなあ~がんばっちゃった~」

盆踊りの曲みたいな節で自作の歌を口ずさむ。自作というか、ただ思っていることが口から出ちゃっただけだけど。

電車に揺られているうちに足が痛くなってきた。朝はゆるいくらいだった靴が、夕方にはきつくなっている。これがむくみというやつか……。


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