お見合い相手は、アノ声を知る人
「……思いきり自分をバカだと思ったよ。
口先だけの男に惚れ込んで、疑いもせずに信じきって、嘘も見抜けずに初めてを全部彼に捧げて、愛されてると思い込んで自惚れてたの。

だけど……」


彼に声をかけられた奥さんは表情を歪めながら、祐ちゃん…と彼を呼んだ。

子供みたいな呼ばれ方をした彼が肩を支えるように触れた時ーーー



「……奥さんの足元に出血が見えた瞬間怯えた……。最初は薄かったものが次第に濃くなっていって……」


何が起こったのか分からず、ぼんやりと二人の姿を見ていた。
彼がハッとして奥さんを見たら、奥さんは苦痛な表情で「赤ちゃんが…」と言ったきり気を失ったーーー。



「…その後は、彼が一生懸命奥さんの名前を叫んでたことしか覚えてない。急いで救急車を呼んでくれと頼まれて、無我夢中で119番に連絡したように思うけど……」


脳裏にも瞼の裏にも残ってるのは奥さんの足元に広がった出血だけ。

目の前が真っ暗になっても、それだけがずっと消えずに残ったーーーー。


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