お見合い相手は、アノ声を知る人
アノ声……
「……もう分かったでしょ。私は自分の愚かな行動の所為で大切な命を失わせたの。
結婚して十年も経って、ようやく授かった命だったのに。

彼の奥さんはショック過ぎて、今もまだ入院してる。
不倫が原因で奥さんが流産したとオフィス内で噂が広まって、居た堪れなくなった私は仕事も辞めた。

こんなこと、実家の家族に話せる訳ないでしょ。
弄ばれたんだと考えたら、私も被害者みたいなもんなんだもん。

だけど、私が仕事を辞めてもマンションを引き払っても流れた命は戻ってこない。

奥さんにも謝罪出来ないし、私が出来ることと言えば祈りを捧げて謝り続けるだけーーー」



「ごめんなさい……もう二度と同じことはしないから……か」



囁く声に驚いた。
振り向くとグラスの中を覗いてた人は、深い溜息を吐いた。


「…あの夜、ドアの内側でそう言ってたよな。背中に凭れてたから隙間が空いてたのを知らなかったんだろ。

泣きながら怯えて謝ってるから何事かあったんだなと思った。
その理由をあんたが引っ越してから同じフロアの人間に聞かされたんだよ。

…あいつとは不倫だろうなと察しも付いてた。

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