お見合い相手は、アノ声を知る人
「用意はできたか?じゃあ行くぞ」


「え、あの、ちょっと待って下さい」


さっさとカードキーを抜き取る彼の元へと走った。
一緒には出掛けません、と一言言うつもりだったのに。



「明里」


「えっ」


振り向いた彼に急に名前を呼ばれてドキン!とした。
何で?と思ってたらふわっと優しい顔で笑いかけてきた。


「お礼参りに行くぞ」


「えっ?お礼参り?」


「その後でデートしような」


「は?デート?」


「じゃあ出るぞ」


ガチャ…とドアを開けるとさっさと自分が先に行ってしまう。
呆然としてる隙に置いて行かれ、私は彼の背中を慌てて追いかける羽目になった。



「…ねぇ、待って。私は…」


ドアを開けて彼に追いつき、貴方とは出掛けませんと言おうとしたんだけど。


「自分の先祖に会うのは、明里も初めてだろ」


楽しそうに彼が言ってくるもんだから言えなくて。
お礼参りというのは、もしかして、お墓参りに行くということなのか…と顔を見た。


「俺も子供の頃以来なんだ。ちょっと遠いけど付き合えよな」


< 151 / 213 >

この作品をシェア

pagetop