お見合い相手は、アノ声を知る人
「私、やっぱり幸せになったらいけないのよ。誰とも一緒になったらダメ」


どんなに彼が私の側に居たいと言っても、こんな自分の側に居たらいけない。


「いいんだよ。そんな明里だからこそ俺が一緒に居てやるんだ」


肩に手を置いた彼が、泣き崩れる私を起こした。
意味が分からず嗚咽を漏らしながら目を向けた。


「当主の言葉を読んだか?いつの日か必ず月野家を助けると言ってただろ。
…今がその時のように思えるんだ。俺が明里を助けるのをこの当主も待ち望んでるように思う」


ちらっと本に向けた目を私に戻し、そうだろ?と訊ねる。
そんな彼の言葉を間に受けていい筈はない。


「でも…」


「よく考えろよ。明里の先祖が行なった行為で、どれだけ大勢の者が泣かずに済んできたと思う?

お前の先祖は小早川の代を継いだだけでなく、現在まで多くの人を笑顔にしてきたんだ。

俺やジジイがこの世にあるのも月野家のお陰だし、ボロボロに傷付いてる明里を同じマンションで見掛けたのもやっぱりこの直之って当主の導きとしか思えないんだ。
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