お見合い相手は、アノ声を知る人
(命のリレー…)


ぼんやりとその字を見ながら涙が溢れた。
祖父から聞いた話よりも遥かに深く感動してしまった。


自分の先祖がそんな勇気ある行動に出たことが素晴らしいと思った。
それに比べて自分は、とてつもなく大きな罪を犯してる。


妻のいる人を好きになって、その人の子供を流してしまった。
仕様がないと誰かが言っても、自分があの人を好きにならなければ生まれてたかもしれないんだ。


(私……命のバトンを渡すどころか振り落としてしまってる……)


そう思うとどんなに深イイ話も胸の奥に棘となって刺さった。
どんなに泣いて謝ってもやっぱり罪が拭えないーー。



「明里」


お風呂から上がったと思われる彼が肩に手を置いて、その顔を見ると涙で歪んだ。


「私がしたことは…この話とは正反対……」


どす黒くて誰にも聞かせられない。
絶対に、許しても貰えない。


「どうしたらいいの?私…どうしたら……」


昨夜散々泣いたけど、やっぱり今も泣けてくる。
彼の背中に全てを吐き出しても、自分の罪は無くならないーー。


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