お見合い相手は、アノ声を知る人
キョトンとしたまま、うんと言ったが、彼にその声が届いていたかは分からない。


ただ、青い稲穂の並ぶ田んぼを見てる彼がいい人だと思った。会えて良かった…と感謝して、先祖の生まれた場所を後にしたーー。


その後は世界遺産に指定されてる場所を巡り、ローカル線の駅に戻ってきたのは午後一時過ぎ。

レンタカーを戻してくると言った彼を駅舎の前で待ち、昨日と同じように蝉時雨が賑やかだな…と思いながら空を仰ぐ。

彼のご機嫌は世界遺産を回ってる間に直り、いつものようになったのが嬉しかった。

自分がどんな顔をしてたかは知らないけど、此処に来て良かったように思う。

お礼参りに行こうと彼が言い出した時は何故?と不満も感じたけど、今は彼との出会いをホントに感謝してる。

ずっと一緒に居てくれると言った人の言葉を心から信じられる。

そう思うと山根さんとの日々は何だったのだろう……。


目線を下ろしてアスファルトを見つめた。

彼といる時は、こうしていつも足元ばかりを見てた気がする。

後ろめたくていけないことをしてると思いながら一緒の時間を過ごしてた。

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