お見合い相手は、アノ声を知る人
私の結婚とは関係もない。
だって、私は人並みに幸せになってはいけないと思うから……。



「お祖父ちゃん…」


私と彼をお見合いさせて、してやったりと思ってることだろう。だけど、相手が悪過ぎたよーー。


「昼間も言ったけどお見合いは断って。あのオフィスで働けるだけで十分ご恩は返して貰えたと言っていいから」


そう言うとゆっくりと立ち上がって部屋を出た。

明里?と声をかけて来る母に振り向き、「疲れた。寝る」と呟いて二階へ上がるーーー。



憂鬱だ。何もかも。
あんな大きなビルの中で、私の日常が変わろうとしてる。



(先祖の祟り?違うと言ってもそうとしか思えない……)


グッタリとベッドの上に横たわると、いつの間にか部屋に付いて入ったマルコが背中の上で足踏みを始める。


「……マルコ、痛いよ……」


爪がチクチク立って痛い。
まるで、あの夜に感じた胸の痛みが残ってるようだ。



(私は誰とも幸せになんてなったらダメだ。だって、してはいけないことをしたんだから……)


お祖父ちゃん、ごめん…と謝りながら目を閉じた。

思い出した過去の記憶に、ツーッと涙が溢れていった………。



< 58 / 213 >

この作品をシェア

pagetop