お見合い相手は、アノ声を知る人
「カッちゃん、どうでもいいけど紹介してくれよ。未来の花嫁さんをさ」


「あ…」


「あの!私はこの人の嫁にはなりませんから!」


紹介される前に否定したら、隣にいる彼は仏頂面で「往生際が悪いぞ」と言い返してきた。


「悪くて結構よ。それに、貴方に付き合うのは今日だけですから」


プイと顔を背けてしまうと、彼は呆れたように息を吐いて梶野さんに紹介した。


「こいつ月野明里って言います。名前に反して強い女だけど」


「何ですってー!」


「あーうるさい。梶さん、早くこいつに果物の入ったカクテル作ってやって」


「こいつとか言わないでよ、もう」


あんたとかこいつとかって、私にはちゃんとした名前があるんだからね…とボヤく。


「はいはい。あんたが素直になったら名前で呼んでやるよ」


今はまだ「あんた」で上等だと言い、自分にはビールを頼むと注文した。



「はいよ」


梶野さんは笑いながらカクテルを作り出し、私はそれを面白そうに見つめる。

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