お見合い相手は、アノ声を知る人
作ってくれたのは二十世紀梨を使ったカクテルで、飲んでみると爽やかな甘さと風味が口の中に広がった。


「これ美味しい!癖になりそうな感じ!」


ゴクゴク…と一気に飲んでしまうと、梶野さんは大丈夫?と聞いてきた。


「何がですか?」


「今のカクテル結構度数の高いリキュール使ってるからさ。あんなに速いピッチで飲んで平気かなと思って」


「別にどうもないようですけど」


「あんた意外に酒強い?」


左隣の彼が聞いてきて、「うーん、どうだったかなぁ」と呟いたまでは覚えてる。
だけど、その後は急に頭がクラッときて、吸い込まれるようにテーブルの上にうつ伏せた。



「明里!?」


誰かが私の名前を叫んだ。



(……誰だろう。あの人……?)


週末を共に過ごすことが少なかった彼だろうかと思い、ポロリ…と声が漏れた。




「祐司さん…」



あの夜、もう二度と会いませんと誓った人。
あの日以来、私の心は凍てついてしまった。



(ごめんなさい……全ては私が悪いんです……)


そんな思いと一緒に、涙が溢れ出たような気がする。

だけど、ひょっとしたらそれは、夢だったかもしれないーーー。




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