恋するオフィスの禁止事項 ※2021.8.23 番外編up!※


ふたりきりの会議室で、先輩に模擬のプレゼンを披露した。

「……どうでした?先輩。一応、こんな感じでやる予定なんですけど」

模擬ではあるけれど、初めてのプレゼンを先輩に見られ、心臓はバクバクと鳴っている。

先輩は口もとに指をあてて、手元の資料を見ながら考え込んでおり、決して良い反応ではなかった。

「うん、分かりづらい」

「えぇ!?」

「お前の話し方スッと入って来ないんだよ。内容は何回も添削しただけあって悪くない。伝え方の問題」

思ったことをズバッと言ってくれる。私にはこれがすごくありがたい。

「伝え方?ど、どうしたらいいんですか?」

「もっと自信持って話せよ。十分いい企画書なんだからさ。今みたいに、こんなのどうでしょう~って言われたって、ピンと来ねえよ。水野はこれを売りたいの?売りたくないの?」

「も、もちろん、売りたいです!」

「じゃあ売ろうぜ。そういう気持ちで、もう一回来いよ。お前ならできるだろ」

「はい!」

先輩の指摘はいつも的確だ。

私に足りないものは何か、そして私がそれを前向きに直すには何て言えばいいか。いつも分かっている。

指摘事項が満載の私をじれったく感じているだろうけど、それでもこうやって投げ出さずにひとつずつ私に向き合ってくれる。

もちろんそれは、リーダーでもあり育成係でもある先輩の仕事のひとつなのかもしれない。それでも、嬉しい。

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